今回からは、「生活支援としての日本語学習の支援」について考えます。ここであらためて、「生活者としての外国人」を対象にした日本語教室の役割を整理した図を示します。
図1 「生活者としての外国人」を対象にした日本語教室の役割
これまでは、外側の生活支援について広く考えてきました。これからは、内側の「生活支援としての日本語学習の支援」について、その目標と内容を考えます。
これから考えるのは教室活動になるのですが、その際、何よりも大切なことは、目標を考えることです。なぜなら、教室活動の内容と方法は、教室活動の目標を達成するためのものであり、目標がなければ内容と方法は本来、考えられないからです。したがって、「生活者としての外国人」を対象にした教室活動に対し、まず適切な目標を立てることからスタートしましょう。
さて、日本で生活し始めた外国籍住民が直面する日常の出来事とは何でしょうか。それは、国では当たり前にあった日常生活で自分に適したものを選ぶという日常を喪失することです。それは、次のようなことです。
◆食べたいものが買えない、着たい服が着られない、必要な手続きが行えない、行きたいところに行けない、自分に合った治療が受けられない
このように、外国籍住民が直面する日常生活における当たり前の喪失という事態から考えた場合、「生活支援としての日本語学習の支援」、つまり教室活動の目標は、外国籍住民が母国ではあった日常生活における当たり前を取り戻すことになります。より正確に言えば、日常生活で自分に適したものを選び自分らしく生活できるように支援することが教室活動の目標となります。