今回は、「知っていることば・知りたいことば」のパートです。

一般に文型シラバスの教科書だと、語彙を導入することが行われます。語彙の導入は、その課で使われる語彙を教師が学習者に伝えることです。この方法だと、教師は学習者に多くの語彙を教えることができるのですが、学習者にとってその語彙が自分と関係性が薄い場合は、十分に覚えることができません。そこで本書は、まずそれぞれの話題に応じて、学習者が自分の知っている語彙を書き出してみることからスタートします。その上で、その学習者が表現できない語彙やその学習者に必要な語彙を提示します。

上の例だと、緑で記されているものが、学習者が書いたものです。赤字がパートナーが提示したものです。「風呂場・洗面所にある日用品」のところでは、学習者が「せんがんざい」と書いたので、パートナーは「せんがんフォーム」とフィードバックしています。またプラスアルファとして、「くし、ティッシュ、せっけん」などを提示しています。また「薬箱にあるもの」では、学習者全員が「サロンパス」と記しました。建設業に従事しているだけに、打ち身や関節痛などがあるからでしょう。パートナーは、けがが多い学習者に合わせて、「アルコール、しょうどく」をプラスアルファで提示しています。このように、一方的に語彙を導入するのではなく、学習者に合わせて語彙を提示するのが本書の特徴です。